包丁に使用される日本製の鋼材としては、日立金属の安来鋼(青紙、白紙、銀紙シリーズなど)、武生特殊鋼のV金シリーズ、愛知製鋼のAUSシリーズなどがよく知られており、この愛知製鋼AUSシリーズの最高品質の鋼材がAUS10です。
当店でもAUS10の包丁を取り扱う機会が増えていますので、AUS10とはどんな鋼材なのか、簡単にまとめておきたいと思います。
AUS10は愛知製鋼が製造する高品質ステンレス
愛知製鋼はトヨタ自動車に鋼材を提供する日本を代表する素材メーカーで、特殊鋼条鋼、チタン、工具鋼など、いろんな鋼材を扱っています。その中に高強度ステンレス鋼の部門があり(代表的なのがAUSシリーズ)、これが刃物鋼として使われています。
AUSシリーズには、AUS-6、AUS-8、AUS-10といった種類があり、この中でも最も硬く、耐摩耗性があるのがAUS-10。別名10Aとも呼ばれ、高級包丁の素材として使われています。
切れ味、品質は?
よく知られる硬質ステンレスとして、武生特殊鋼のV金10号と日立金属の銀紙三号がありますが、AUS-10はこれらとほぼ同等の切れ味、品質です。
炭素の含有量
※炭素の含有量が高いほど硬く、良く切れ、切れ味が続く刃物になります。
- 武生特殊鋼 V金10号 : 0.95~1.05%
- 日立金属・銀紙三号 : 0.95~1.10%
- 愛知製鋼 AUS-10 : 0.95-1.10%
銀紙三号とAUS10が若干高いですが、ほぼ同じと言えます。
クロームの含有量
※クロームの含有量が高いほど錆に強いです。
- 武生特殊鋼 V金10号 : 約15%
- 日立金属・銀紙三号 : 約13~14%
- 愛知製鋼 AUS-10 : 約13~14%
武生特殊鋼 V金10号が少し高いですが、こちらも大きな差にはなりません。V金10号やAUS10は、通常クラッド材やダマスカス材のように他の鋼材と合わせて使われる事が多く、結局V金10号でない方の鋼が先に錆びてくるからです。
AUS10の品質
AUS10は、V金10号や銀紙三号に並ぶ日本のトップレベルのステンレス鋼であることは間違いありません。ただし炭素、クローム以外の成分によって若干の違いは出ているようで、銀紙三号の切れ味が良いと感じられたり、V金10号より銀紙三号やAUS10の方が研ぎやすかったり、微妙な差ではありますがそのような事はあるようです。
AUS-10の含有成分
AUS-10には、炭素(C)、クローム(Cr)の他に、以下のような成分が含まれています。
モリブデン、バナジウム(耐摩耗性向上)、マンガン、ニッケル、ケイ素・・・など。
AUS-10の詳しい化学成分表につきましては、こちらのメーカーのウェブサイトでご覧頂けます。刃物用ステンレス鋼→高強度ステンレス鋼板に進んで頂くとご覧いただけます。